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RX-78F00/E EX-001 G.L.R.S.S. Feather UNIT [JAL SPECIAL PACKAGE Ver.]

一昨日犬友から、表題の万博ガンダムコラボのガンプラをいただきました。EXPO 2025 「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」出展機体を1/144スケールで立体化したものです。

「JAL Special Package Ver.」は、JALをイメージしたオリジナルデカールや、JALガンダムJETのパッケージデザインを採用した特別仕様のものです。販売形態が、往復航空券+宿泊を含むJALのオプショナルプラン限定、あるいは機内販売・おうちで機内販売といった限定ルートであることが明記されています。希少性がかなり高いキットと考えて問題ないようです。

とは言っても、転売する気は全くないので価格は気にしていないのですが。

パッケージにRX-78F00/Eガンダムは、モビルスーツが単独で長期にわたり無補給の宇宙空間で活動することを目的とした、再生可能エネルギー運用実証試験機であると書かれています。翼のように見えるものは、高性能太陽光発電セル群の集合体です。

宇宙世紀もののガンダムでは、モビルスーツはミノフスキー物理学(架空の物理学)によって実用化した小型の熱核融合炉を動力源としています。核融合用の燃料はヘリウム3と重水素であり、ほかに推進剤を必要とします。ツィオルコフスキーの公式に従って、推進剤を噴射してロケットは推進します。ツィオルコフスキーの公式が当てはまらないのは、ローレンツ力を利用したテザー推進に限られます。

予約が取れず、GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONの中には入れなかったので、再生可能エネルギー運用実証試験機というものが、どのような文脈で語られたのか筆者にはわかりません。長期間活動するにも推進剤は必要です。同じ質量の推進剤ならば、燃費が良く長寿命のはやぶさ、はやぶさ2に搭載されたキセノン・イオン推進を主動力に用いるのがもっとも合理的と感じます。低推力で瞬間加速度は小さいので時間はかかります。

この長い時間をパイロットはどうやって生命を維持していくのでしょう。無人機であるか、「シドニアの騎士」のような光合成ができるようになった人類が操縦するという設定を用いないと不可能に思えますが、そのような記載はどこにも見つけられませんでした。

パイロットは人間だが、光合成型バイオスーツで栄養補給が可能といった補助設定が必要かも知れません。

多田富雄「サプレッサーT細胞」

絵がないと寂しいので、多田富雄の著書をここに載せます。

今年のノーベル生理学・医学賞を阪口志文が「制御性T細胞」で受賞されましたが、東大時代の恩師多田富雄の提唱した「サプレッサーT細胞」とどう違ったのかをまとめてみました。

どちらも免疫反応を抑制するT細胞の概念ですが、成立した時代背景、証拠の有無、研究の進展によって大きく性格が異なります。

多田富雄の「サプレッサーT細胞」

1970年代の概念:多田富雄が提唱したのは1971年。ちなみに千葉大学教授から東大教授になったのは1977年でした(筆者はM1の学生)。

問題点:サプレッサーT細胞を明確に同定できる分子マーカーがなく、再現性の乏しい結果も多かったため、1980年代には幻の細胞とみなされ免疫学の主流から退けられました。

阪口志文の「制御性T細胞(Treg)」

1995年の発見:胸腺で分化するCD4+CD25+T細胞が自己免疫を防ぐ抑制的な役割を持つことを報告しました。のちに転写因子FoxP3がその分化と機能のマスター遺伝子であることを示し、Tregは免疫抑制の実在の細胞として国際的に確立されました。

特徴:1)分子マーカーで同定可能。2)自己免疫疾患や移植、アレルギーなどにおいて抑制機能を果たすことが実験的にも臨床的にも証明されました。3)免疫の負の制御が実体を持つことを明確にしました。

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一度は否定された「サプレッサーT細胞」の概念ですが、歴史的な位置付けを考えてみると、免疫には抑制系があるという発想の出発点となっています。多田富雄はその挫折を正直に認めつつ、免疫の抑制系存在の直感は正しかったと後に語っています。阪口志文のTreg発見を喜び、自らの仮説が未来の発見の伏線となったことを誇りに思っていたということです。

1977年当時の東京大学医学部は「東大卒でなければ教授になれない」という慣習が強く残っていました。多田富雄が千葉大出身で東大教授になったのは慣習を打ち破る人事であり、免疫学という新しい学問の旗手として期待を集めたできごとでした。また、学生と一緒に新宿の裏通で飲むといった開かれた性格の方でした。

セーシェル「ココ・デ・メール」

EXPO2025、2025年6月24日コモンズAでアフリカ、ケニアの東、インド洋上赤道少し南の国、セーシェルの展示を見た。

今から41年前の1984年に、セーシェルの中の、首都ヴィクトリアを擁するマヘ島、ヴァレ・ド・メ自然保護区のあるプララン島、数百万羽のセグロアジサシが集まる珊瑚礁のバード島の3つの島を旅行している。プララン島が一番気に入った。

セーシェルを象徴するユニークな植物「ココ・デ・メール」(和名:双子ヤシ)を紹介する。

ココ・デ・メールの実は植物界最大で、重さは最大40kgにも達する。人間のお尻に似た独特の形。現在は世界遺産となっているヴァレ・ド・メ自然保護区が最大の自生地である。

ヴァレ・ド・メの世界遺産登録は1983年にユネスコによる推薦の後、正式登録は1987年。現在は保護が非常に厳格化し、散策路、案内サイン、ビジターセンターが設けられガイドツアーの質も向上、保護と観光の両立を目指す整備が進んでいるという。

1984年当時は道路は舗装されておらず小型バギーで散策したが、現在はバギーは公道走行禁止で、タクシー、電気シャトル、徒歩観光が主流。宿泊施設もコテージから高級ヴィラに移り変わり料金帯も上昇と。

現在のセーシェルは地球温暖化の影響が明確である。とくに海面上昇、サンゴ礁の白化、生態系の変化といった現象が深刻な問題として表面化している。セーシェル政府は「小島嶼国(しょうとうしょこく)の気候変動脆弱性」を訴えるリーダー的存在となり、再生可能エネルギー導入、海洋保護区拡大、ブルーエコノミー政策など気候変動に対応する施策を強化中。

2025.6.29「H-IIAロケット」50号機で終了

2001年8月18日種子島宇宙センター

H-IIAロケット1号機は、2001年8月29日打ち上げに成功した。

画質が悪いが、2001年8月18日付の種子島宇宙センターの写真が出てきた。H-IIAロケット1号機が頭(フェアリング)なしの状態で発射台に立っている。人工衛星などのペイロードはまだ積まれていないだろう。

写真下部に見える白煙は液体燃料エンジンの地上燃焼試験によるものだろうか。

その前のH-IIロケット5号機、8号機の相次ぐ失敗で、まさに後がない状態でH-IIAの開発が行われていたはずだ。

打ち上げを見ることはできなかった。

このH-IIAロケットも50号機をもって終了となった。後はH3ロケットに任された。

ブルキナファソ「国民的英雄の記念碑」

EXPO2025にて、2025年6月23日コモンズD館で西アフリカの国家、ブルキナファソの展示を見た。「国民的英雄の記念碑」の写真が1枚あっただけと記憶している。

地理的にサハラ以南髄膜炎ベルトの中心に位置するブルキナファソは、疾病との戦いに大きな負担を強いられてきた。しかし、この髄膜炎はワクチン普及により徐々に制御されつつあり、現在の貧困の主因とは言えない。

近年急速に貧困を悪化させている決定的要因は、内戦・テロ・治安悪化の方だ。

「国民的英雄の記念碑」の写真は、現在の混迷した政治体制を皮肉ったものだろうか。それとも縋り付くことのできる唯一の誇りの象徴なのだろうか。

アニメ「GQuuuuuuX」ジオン公国ズムシティ公王庁舎に雰囲気が似ている。

「天鵞絨葉巻蛾」ビロードハマキ

和名:ビロードハマキ    チョウ目  ハマキガ科
学 名:Cerace xanthocosma
大きさ: 約3cm
6月に品川区で撮影

ビロードのような質感の翅は、黒地に黄色い斑点模様がびっしり。そこに2本の赤いラインが縦に通っていて、アクセントとなっている。体全体がオーバル型で、まるでファンシーな「おはじき」、「アート作品」のように見えます。

さらに隠れた魅力となっているのが靴下を履いたような脚です。ビロードハマキの脚は、節ごとに色が切り替わっていて、黒と淡色のストライプといえる配色になっている。この切り返しがまるで「短めのソックス」や「ボーダー柄のレギンス」を履いているようで、とてもキュート。

細部にまでファッションセンスを感じさせる、とても素敵な蛾です。

松崎有理「山手線が転生して加速器になりました。」

「二〇一九年末、世界は未曽有のパンデミックにみまわれた。そのウイルスはエボラ出血熱を上回る致死率と激烈な感染力を特徴とし、しかもひんぱんに変異してワクチン開発の努力をあざ笑った。ついに人類は降参し、社会性哺乳類特有の密になる習性を捨て去ることにした。のちにいう「都市撤退宣言」が出されたのである。」

この背景を持つ世界を描いた上記短編集の6つ目の話、「みんな、どこにいるんだ」の内容に触れる。

筆者のもっとも好きな寿司ねたはタコだ。タコせんべいも、子供の頃駄菓子屋で買う定番のおやつだった。アニメ「ぼざろ」の影響を受け、江ノ島のタコせんべいをオンラインで購入し、ご近所に配ったりしている。

ピーター・ゴドフリー=スミスの「タコの心身問題」を読んでいるだろうか。タコは非常に賢い無脊椎動物である。ごく普通のマダコの身体には、合計で約5億個のニューロンがある、これは無脊椎動物の中では群を抜いている。タコの脳は脊椎動物の脳とはまったく違う。持っているニューロンの大半が脳の中に集まっているわけではなく、ニューロンの多くは腕の中にあるのだ。

現実世界では、知性の高い動物の狩猟を禁じる国際的な運動が、クジラのようにタコも守ろうとしている。高齢の日本人グループが、タコ焼きの美味しさの思い出を懐かしく語り合うという未来がやってくるのだろうか。

「みんな、どこにいるんだ」では、ある年の2月29日にタコが道具を使って人間の文字で、「ワタシタチヲ タベナイデ」と世界中で訴えたことが、事件の始まりだった。

高橋昌一郎「フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔」

「横浜駅SF」で知られたSF作家、柞刈湯葉(いすかり・ゆば)の短編集「まず牛を球とします。」に収載された「沈黙のリトルボーイ」の作者解題で紹介された。参考資料として読んだが、大抵の小説よりも小説だったとある。

「人間のフリをした悪魔」と呼ばれ、宇宙人のような人類を超えた知性を発揮したフォン・ノイマンは、非常に幅広い科学の分野に影響をおよぼした。その逸話は、様々な書籍で目にしてきたが、一冊の本で通して読むのは初めてだった。

序文に「フォン・ノイマン著作集」のタイトルが列挙されている。第1巻「論理学・集合論・量子力学」、第2巻「作用素・エルゴード理論・群における概周期関数」、第3巻「作用素環論」、第4巻「連続幾何学とその他の話題」、第5巻「コンピューター設計・オートメタ理論と数値解析」、第6巻「ゲーム理論・宇宙物理学・流体力学・気象学」だ。

その哲学を推測するにあたって、本書では原爆開発の「マンハッタン計画」での業績、発言、行動の比重が大きく取り扱われているように思える。

きっかけとなった柞刈湯葉の短編集

カルロ・ロヴェッリ「時間は存在しない」

世界的ベストセラーの物理学の書籍。著者は、一般相対性理論と量子力学を統合する、ループ量子重力理論を提唱する理論物理学者。原題は”L’ordine del tempo”、直訳すると「時間の順序」となる。

宇宙を記述する基本方程式に時間変数が存在しない。すなわち過去と未来の違いは存在しないことの説明が前半部分(第1部と第2部)。それでもなぜ、わたしたちは一方向に流れる時間を感じるのかの考察が後半部分(第3部)となる。

熱力学の第2法則からエントロピーは増大する。時間の向きが指定できるのは、エントロピーの増大という統計的な変化を考慮に入れた場合に限られる。初期の宇宙は極端な低エントロピー状態だった。すなわちはるか昔の事物の配置が「特殊」だったと言うことができる。しかし、「特殊」というのは相対的な単語で、あくまでも一つの視点にとって「特殊」なのだ。人間は物理現象の根底にある微細な基礎課程を識別できず、統計的な側面だけをぼんやりした視点から眺める。そのぼやけに関して「特殊」だったのだ。

エントロピーの増大は痕跡を残す。記憶というプロセスがこの痕跡に従う。わたしたちは記憶と予想からなりたつのだ。

おもしろい。

様々な哲学者の言葉、文学、音楽が引用されている。本書にはとりあげられてなかった時の流れの詩を、個人的な好みから追加してみよう。ギヨーム・アポリネールの「ミラボー橋」だ。「日も暮れよ、鐘も鳴れ 月日は流れ、わたしは残る」。

ループ量子重力理論については、同じ著者の”La realtà non è come ci appare”(現実は目に見える通りではない)、邦題「すごい物理学講義」と、”Sette brevi lezioni di fisica”(7つの短い物理学講義)、邦題「世の中ががらりと変わって見える物理の本」に、取り掛かりやすく書かれている。

ロブ・ダン「世界からバナナがなくなるまえに」

生物学的多様性、最近は「生物多様性」と言うんだった、その保全が農業の、いや、人類の未来を支えるのに必須であることを、進化生物学者の著者が、歴史上の事例の紹介を交えて解き明かす。

本書の邦題となっている、バナナの逸話が最初に語られる。かつては流通するバナナのほとんどを占めていたグロスミッチェルという品種は種子を結ばず、地下茎から生えだす吸枝を使ったクローン形態での繁殖を行うしかない。世界中の輸出用バナナが遺伝的に同一だったのだ。1890年にパナマ病の流行が起こった時、すべての農園が壊滅した。グロスミッチェルに似ていて、パナマ病に対する病害抵抗性を持つバナナはキャベンディッシュ種しかなく、キャベンディッシュに全部入れ替わった結果が我々の知るバナナの市場だ。キャベンディッシュも遺伝的に同一である。新パナマ病の脅威が近い。新たな技術と伝統品種の遺伝子を生かして、病害抵抗性を持つ品種を作り出さなければならない。

1845年から1849年のアイルランドのジャガイモ飢饉は、食物のジャガイモへの依存度が世界一高かったこと、ランパーというたった1つの品種が大規模に栽培されていたことなどから、ジャガイモ疾病のパンデミックにより起こった。当時のアイルランドの人口800万人のうち、100万人以上が死亡したのだ。

この話を読むと、ハンバーガー屋でフレンチフライを残すことができなくなる。カンボジア、ポル・ポト政権下の大虐殺で、人口750万人中、100万人以上が死亡したとされるが、同規模の悲惨な事態だったとイメージできる。

科学者たちが常に無力だったわけではない。アフリカでの重要なカロリー源、キャッサバがコナカイガラムシに脅かされたとき、害虫の天敵となるハチを利用して阻止することができた。

衝撃的なのは、1989年にブラジルのカカオプランテーションで発生した、天狗巣病の流行だ。一国の産業が崩壊した。感染した枝をロープで結わえ付けるという、単純な手法による農業テロだったことが後に判明する。犯行はたった6人の手により成し遂げられた。

天狗巣病はサクラにもある。そして、ソメイヨシノはすべて遺伝的に同一のクローンだ。病気の流行に対し非常に脆弱である。しかし、今年の花見の際にじっくりと観察したが、異常な枝は1本もなかった。一般人の知らないところで木々の管理が徹底されていることに、感謝の念を捧げよう。

病害抵抗性を持つ品種を見つけ出すために、野生種を含む世界中のすべての品種を集めた種子バンクの重要性が強調される。同様に、病害生物に対し天敵となる生物を探すためにも、すべての生態系が保護され、その情報がネットワークを通して利用できるようにするしかない。