カテゴリー別アーカイブ: 映画

モルテン・ティルドゥム「イミテーション・ゲーム」

91jxpyhuy0l-_sl1500_数学者アラン・チューリング(1912-1954)の生涯を描いた2014年の映画「イミテーション・ゲーム」(日本公開は2015年)を、DVDで観ました。監督:モルテン・ティルドゥム。主演:ベネディクト・カンバーバッチ。

チューリングマシンの名の通り、コンピューターの誕生に重要な役割を果たしたアラン・チューリングですが、第二次世界大戦中にドイツのエニグマ暗号を解読し戦争終結に多大な貢献をしたことは、1970年代まで国家機密とされていました。

実際のエニグマ暗号解読の詳細については、サイモン・シン「暗号解読」などの書籍に詳しく書かれています。映画ではごく簡単に描写されているだけです。映画内でクリストファーの名で呼ばれる暗号解読装置ボンブは、映画の演出の都合上実物より大きく作られました。まるで1987年の日本のアニメ映画「王立宇宙軍 オネアミスの翼」に出てくる機械式コンピューターのように見えます。「オネアミスの翼」の方も、機械式コンピューターのデザインをボンブを参考にした可能性はあります。

これを書いた後Netflixで視聴可能になったので「オネアミスの翼」を見直してみましたが、コンピューターは電気式であり、機械式ではありませんでした。別の作品でしたか。「屍者の帝国」のは、もっとエレガントなデザインですし、記憶の出どころが不明です。失礼しました。

この映画の特に素晴らしいパートは、エニグマ暗号解読に成功してからラストまでの30分間です。

お勧めの映画です。まずは観てください。

デヴィッド・ボウイ「地球に落ちて来た男」

IMG_2017 IMG_2020ロックスター、デヴィッド・ボウイが2016年1月10日帰らぬ人となりました。このニュースがSNSを通してシェアされて来たのは、日本時間2016年1月11日の午後になってのことでした。大事件だと、すぐさま眼科スタッフのみんなに伝えましたが、ジェネレーションギャップを感じるはめとなりました。

ボウイの活動の幅は広く、ミュージック・シーン以外にも映画俳優としての活躍が有名です。大島渚監督「戦場のメリークリスマス」(1983)を観た人は多いと思います。古くからのファンにとっては、その後の人生に大きな影響を与えた映画として「地球に落ちて来た男」(1976)について語らないわけにはいきません。千石にあった座席数300の劇場、三百人劇場に観に行ったと記憶しています。三百人劇場は劇団昴の拠点でしたが、数々の演劇公演、名作映画の上映のため足繁く通っていました。

地球の人類と似た姿形のヒトが文明を築く、とある惑星は干ばつで苦しんでいた。地球の文明のことは、地球からのTV放送で研究し尽くされていた。妻と子供たちを残し、宇宙人デヴィッド・ボウイ(役名はトーマス・ジェローム・ニュートン)はロケットで単身地球にやって来た。地球より進んだ科学技術で特許を取り、商業的成功から資金を得て、母星に水を輸送するためである。しかし、その商業的成功が国家的情報機関の陰謀を招き、ボウイは誘拐隔離されボウイの企業の主要人物たちは粛清された。水と同じ無色透明な液体であるジンに溺れて、アルコール漬けになっていった。母星に残した家族の死が、超感覚でボウイに伝わった。変装用コンタクトレンズが眼球に張り付いて取れなくなり、元の宇宙人の姿には戻れない。母星に帰る手段もない。

地球の情報をチェックするためテレビセットを10画面以上並べて、すべて同時に見ていくシーンが画期的でした。まだ、パソコンもない時代であり、マルチディスプレイの未来が来るなど考えられないことでした。今、私は診療で3つのディスプレイを同時に使用していますが、ディスプレイが多いほどかっこいいと、この映画で刷り込まれた人はたくさんいることでしょう。

ボウイの音楽活動は1980年代に入ってから、一般の人が受け止めやすい楽曲に変わり、”Let’s Dance”, “China Girl” は多くの賛同者を獲得しました。ナスターシャ・キンスキー主演の映画「キャット・ピープル」の主題歌を歌ったことも話題となりました。

私が、1980年に作・演出した芝居で、幕間狂言のBGMとしてボウイの1979年のアルバム “Lodger”から、”African Night Flight”を使用しました。役者たちの肉体に過酷な負担を強いる演出だったので、皆から怨念と呪詛を受けることとなりましたが、今でもこの曲を聴けば体が勝手に動きだす当時のメンバーはいるだろうと想像します。このアルバムの曲のなかでは”Yassassin”が1番好きでした。