もう長いこと、左後頭部を中心とした被髪頭部に湿疹が起こっている。シャンプーなどに含まれる合成界面活性剤を問題視して、2008年よりこの17年間ずっと天然石鹸のみで洗っている。
天然油脂が原料で、合成界面活性剤・化学添加物不使用なのが天然石鹸だ。フランスのマルセイユ石鹸「サボンドマルセイユ」が昔から有名だが、2008年ごろはシリア第2の都市アレッポで作られる石鹸の評価が高くなり広まって行った時期だった。そしてシリアというと真っ先に思い出すノンフィクションがあった。歴史や地理の教科書的知識ではなく、物語性があったほうが購買意欲に結びつきやすい。
サダム・フセインが1990年8月にクウェートを侵攻し、多国籍軍による湾岸戦争が始まったのは1991年1月のことだ。英国陸軍特殊部隊SASがイラクの移動式スカッドミサイルを無力化しようと立てた作戦「ブラヴォー・ツー・ゼロ」。任務に失敗し、イラクの隣国シリアに徒歩で逃走ということになった。距離は300km。東京から豊橋までの距離に相当する。
8名の隊員のうち3名が死亡(2名は低体温症で)、4名が捕虜となり、1名のみがシリアに脱出できた。捕虜はイラク軍兵士に拷問された。邦訳の出版は1995年。1999年に映画化。
東京都福生市の株式会社アレッポの石鹸(1994年創業)がシリアのアデルファンサ社製造の石鹸を輸入販売したのが「アレッポの石鹸」だ。着実に販売個数を伸ばしていたが、2011年にシリア内戦が始まると反体制派の拠点だったアレッポは激戦地となった。2014年にはイスラム国がアレッポの一部地域を占拠した。
2014年にアデルファンサ社は国内避難。他の石鹸会社もトルコに難民となったところが少なからずある。トルコ生産の石鹸は「アレッポからの贈り物」「アレッポの石鹸職人から」などのブランド名となっている。
2024年12月に反体制派が首都ダマスカスを制圧、50年以上独裁を続けたアサド政権は崩壊し内戦は終結した。また、2024年12月ユネスコがアレッポの月桂樹石鹸の職人技を無形文化遺産に認定。アデルファンサ社もアレッポに戻って操業している。政情の安定を願う。
通常サイズで「アレッポの石鹸」は180から200グラム。「サボンドマルセイユ」は300グラムだ。どちらも大きいので豪快に使える。天然石鹸は融解しやすいので、トレイを乾かしておく注意が必要だ。