本書は、量子コンピューターを「未来の魔法の計算機」ではなく、いま現実に存在し、課題と制約を抱えた技術として理解するための教養書です。数式を用いず、
- 古典コンピュータとの本質的な違い
- 量子コンピュータが得意な問題・苦手な問題
- なぜ実用化が簡単ではないのか
といった点を、物理・情報科学・社会的背景を横断しながら整理しています。
量子重ね合わせや量子もつれといった概念を過度に神秘化せず、現在の研究現場で実際に問題となっている
- ノイズ
- エラー訂正
- スケールアップの困難さ
といった現実的な制約と結びつけて説明しています。
また、量子コンピュータの5大方式が紹介されています。現在主流の超伝導方式量子コンピュータの写真を富士通・理研の記事から持ってきました。金色に輝き、巨大な希釈冷凍機の内部でほぼ絶対零度でようやく量子ビットが安定します。この姿から量子コンピュータが最先端の実験装置であることが実感できます。
量子コンピュータを「夢」ではなく、現在進行形の科学技術として捉えるための教養を与えてくれる一冊です。

